仕事の話アレコレ

Webデザイナー、これからの10年

この1週間、Web業界の年収の話題が賑わっていますよね。
とかくクリエイティブなお仕事の場合、「大切なのはお金じゃない!」的な考えを持っている人がいたりして、まあ、僕はそういう気持ちもまったくわからなくもないのですが、でも、やっぱり僕たちはお仕事でWeb作ってるわけですから。
少なくとも、日本人として平均的な給与を貰えていないのならば「お金は二の次」って考えはナンセンス。別に仕事は趣味ではないのですよ。
僕もここらで一旦、自分の現状や今後のキャリアについての考えを真剣に整理してみようかな、と。

事として何かをやる以上、自分の価値はシビアにお金に直結してくるわけで、自分の稼げるお金から目を背けるのはちょっと違うと思うのです。僕みたいに生活のために仕事をして報酬を貰っているのであれば、ね。

端的に言ってしまうと、お金をもっと稼げるようになるためにどうすればいいのかを考えることは、自分のキャリアを考えるということ。ビジネスチャンスとしてのマーケットをどこに見定めて、自分が何を武器にどれだけ多くの人から請われる存在になれるかを考えるということです。

僕がグラフィックデザイナーからWebデザイナーになった2006年当時、すでにWebは生活のプラットフォーム的存在でしたが、それでも今と比べれば、まだまだ発展途上で上向きの業界だったと思います。
当時の僕は、ほぼWeb経験がなくてHTMLさえまともに書けませんでしたが、Photoshopでちょっとキレイな絵を作れるだけで市場価値があった(最初はIllustrator使ってましたけど)。

ちょうど2006年というと、多くのWebサイトがテーブルレイアウトからCSSレイアウトへと移行していた時期。まさにビジュアル表現の幅が広がって、絵が作れるデザイナーの価値が高まっていた時代で、うまくその流れに乗れたのかなという思いはあります。

紙からWebへといい時期にキャリアを変更できたなと思う反面、現状としてはもう、絵が作れるだけのデザイナーが重宝される時代は完全に終わったなと感じたりもするわけです。

単純作業は海外へ。そして機械化されていく

誰がやってもクオリティが変わらない仕事はマーケットが飽和すると価格勝負に陥るだけ。そして、人の手が介在しなくても済むものはどんどん機械化されていくのです

DTPの画像補正や切り抜き作業なんかは東南アジア諸国で作業してもらうのが当たり前。最近は、定期媒体はレイアウトさえ中国でやっていたりする。
Webだって、システム構築なんかはオフショア開発が普通になってきて、コーディングも中国でやっていたりするわけです。

弊社も海外(ベトナム)に子会社があって、僕はとある企業の英語版サイトのコーディングをお願いしたことがあります。
もちろん、言葉や時差の面で課題がないとは言いません。ただし、単純作業でレベルの高いものを求めなければ、意外と大きな壁にはならなかったというのが実感です。
むしろ、日本人よりも仕事に対するモチベーションが高かったり、作業が正確だったりしてビックリしたりします。

今後、国内でこうした作業を行う日本人はより一層その分野のプロフェッショナルであることに加えて、ディレクションスキルが求められてくるはずです。
自らが作業者であることよりは仕事の仕組みづくりに注力して、作業者に対して的確に指示を出せるだけの知識とコミュニケーション能力、リーダーシップが必要になるということです。
簡単に言ってしまうと、コーディングだったらテンプレートの設計だけ国内のマークアッパーがきちんとやって、あとの量産は海外にお願いするみたいなイメージ。

もちろん、ボリューム感だったり、スピードだったり、技術だったり、いろんな要素が絡んでくると、結局は国内でやったほうがラクというケースは多いだろうし、海外作業へのシフトは思ったほど急速には進まないかもしれません(そもそも貨幣価値が違うという理由で人件費の安い海外に作業を、というビジネスモデルは本来サステナブルなものではないと思う)。

ただ、世の中的にそういう流れになってるよ、というのは意識しておくべきかと思います。
人の頭を使わなくてもよいことはどんどん機械化されていってしまうものです。力技の単純作業はそのうちロボットにやってもらうことになる時代が来たりして。

だから、「自分にしかできないことは何なんだ?」ということは本当によく考えていかねば。
今の僕が置かれた状況は、世の中が紙からWebへとシフトしていき、「このままではいかん!」と思ったあの時に少し似ているかもしれない、と最近よく思います。

クリエイティブな仕事でリーダーシップをとるということ

制作現場を常にフォローしつつ、伝えるべきことはきちんと伝える。現場を甘やかさないことだって大事。そして、偉そうなことを言う前に自分に厳しく、っていうのは忘れちゃいけないと思う

制作という仕事はビジネスとして時間単価でお金を計算してしまうと、非常に効率が悪くなってしまいがちです。
僕だっていまだにそう。「こんなことに何時間もかけてんのか?」って、自分自身に対して思う時がある(もちろん自分の周囲に対しても思う)。

だから、経営サイドに立つと「非効率な制作の仕事はなるべく外注に」と考えるようになってしまうのも理解できるんです。
とは言え、デザインも技術も何もわからずに予算とスケジュールだけ握って外注をコントロールするようなディレクター(というかプロマネ)を増やすことが組織にとってよいことなのか、というのは純粋な疑問です。

そもそも外部のパートナー(当然、内部とも)と上手な関係を築くためには、デザインや技術に関する知識が絶対的に必要。ディレクターとして大事な仕事のひとつは、制作者をいかに気持ちよく制作に専念させてあげられるか、だから。
無論、クライアントの要望は叶えなきゃいけないし、そこがあってこそのお仕事というのが基本線だけど(クライアントとの付き合い方っていうのもいろいろ考えるけど、今回の話の本筋ではないので割愛)。

つまるところ、クリエイティブなお仕事でリーダーシップをとっていくには、現場感をきちんとわきまえた存在であることが絶対的に重要だと僕は思っています。
自分でデザインできないヤツがデザイナーからリスペクトしてもらえるわけがないので、デザインに口を出したいのなら、少なくとも30代のうちは現場の作業を負担できるレベルの知識と体力が必要。

話が元に戻るけど、そういうスタンスって海外の人たちにお仕事をお願いするときも基本的には変わらないと思うんです。
ディレクターとしての資質のない人は制作者をうまくコントロールできないはずで、それは国内だろうが海外だろうが変わらない。
コミュニケーションやリーダーシップは、デザイン力や技術力にプラスアルファでくっつけていくべき部分だと思っています。僕みたいなアートディレクター的なディレクターの場合はね。

だから、今の僕はデザインや技術からは逃げないし、甘えない。今の年齢(32歳)でここから目を背けたら、自分の価値はなくなると思う。
そのぐらいの気概を持たなきゃな、と改めて昨今の状況を踏まえて思うわけです。

何かをデザインする仕事は絶対に無くならない

メディアが何であれ、「何か」をデザインする仕事自体は絶対に無くならないと思うのです

自ら紙からWebへとキャリアをシフトしたように、作るべきものが何であれ、デザインをする仕事は絶対に無くならないと僕は思っています。だから、10年先(42歳)なら僕はまだ自分の手で「何か」のデザインを作っているかもしれない。

僕がWebをデザインしはじめた頃、グラフィックデザインを経験していたことは大きなアドバンテージになったと思っています。
歴史あるグラフィックデザインの世界にはやはり多くの巨匠がいて、相対的にWeb業界よりもデザイナーとして経験値の高い人が圧倒的に多かった。純粋にビジュアルデザインという観点ではグラフィックデザイナーの作るもののほうが完成度が高かかった当時、そこで少しでも修行してきたことはプラスに働きました。
今でこそ、Webの世界にも優秀なビジュアルデザインの作り手が増えましたけど、それでも紙を経験したことは自分にとってひとつの自信になっています。たとえば、文字関係の知識とかはWebだけやってる人にはなかなか身につかないことも多かったりする。

10年後、僕はWebをデザインしているかどうか正直わからないけれども、きっと「Webを作ってきたことをアドバンテージにできる何か」をデザインしていると思います(おそらく今のようにPC向けのWebサイトをガンガン作ってるってことはないんだろうなぁ)。

時代が変われば、人も自然と変わるはず

目標や計画は無いよりはあったほうがいい。だけど、それに向かって今何の努力もしていないのならば、それは目標とは呼べないと思う

僕は、今はまだWebを中心にデザインの仕事をしていたいと思います。
Web業界にいて面白いのは、とにかく飽きないこと。常に新しいものを追い求められること。そして、自分よりもずっと若い人たちからすごく刺激を受けられること。
自分が楽しんで仕事をできる限りは、今のスタンスでより自分を磨くことに注力していきたい。

最近とある先輩に言われた言葉が印象的でした。
彼が言うには、「今、Webをやってる人はきっと大丈夫だ」と。変化の激しいWeb業界で第一線にいられる人は時代の流れに敏感な人だから、今後世の中から求められることが変わったとしてもきっとキャッチアップできるだろう、ということでした。確かに僕もその点には多少なりとも自信があるから、今は少し悠長に構えていられるのかもしれない。
1年何もしないと廃れていく知識ばかりの世界でみんな何年もWebを作ってる。そういう人は、多少大きくキャリアをシフトしなければいけない状況でもきっと上手にやっていけるんじゃないかな。

紙からWebにキャリアをシフトした2006年当時、自分としては相当大きな決断をしたつもりでいました。だけど、今となって思えば、紙もWebも変わらないところは多かったと思うし、今後Webから何か別のメディアをデザインすることになったとしても、一度そういうパラダイムシフトを経験しているからこそ、さほど抵抗なくやっていけそうな気がします。

結論を言うと、「Webデザイナー、これからの10年」ってタイトルは釣り過ぎでした。
これだけのスピードで世の中が変わっていくんだから、「10年先を見据えて」とかっていうのは僕レベルの頭では考えられません。考えてもなかなかビジネスにしていくのは難しいと思う。
先見の明は大事だけど、僕が生まれてからわずか30余年の間にインターネットがこんなに世界を変えてしまうなんて、なかなか普通の人には想像できなかったはず。逆にあまり先を見越し過ぎても、時代が自分に追いつかなかったりする可能性もあるわけで、それはそれで不幸だと思うし。

1年先ぐらいの目標は漠然とでも定めたほうがよいと思いますが、基本的には今できることをきちんとやっていく、でいいんだと思います。
常に「いつやるの? 今でしょ!」の毎日は疲れるから、たまにはスローダウンも必要。焦らずゆっくり、しかし休まず。自然体で努力し続けるってことでいいんじゃないかしら。

Comment / Trackback (27)

  1. @bitgleams

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  3. @snghrym

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