仕事の話アレコレ

完全にパクられた!? 中国の盗作サイトを閉鎖せよ

4月にローンチした、僕が所属する株式会社シータス&ゼネラルプレスのWeb制作実績を紹介するポートフォリオサイト「CGPWEB」。これがローンチから約2カ月後に、見事なまでに中国の某専門学校(?)に盗作されてしまったのです。
「ここまでまるパクりするかー」と若干の感心すら覚えつつ、最終的には現地の弁護士に作成をお願いした警告状の送付によって、盗作サイトを閉鎖に追い込むことができました。
なかなか経験できることではないので、本件の顛末をブログにまとめておこうと思います。

国と言えば、一流ファッションブランドはもちろん、iPhoneやVAIOなどのデジタル製品から、ドラえもんやガンダムなどのキャラクターまで、ありとあらゆるものが模倣品として出回る国というのは有名なお話。
Webサイトについてもご多分に漏れず、僕らの知らないところで実は勝手にデザインを模倣されているのかも? CGPWEBは、ほんとビックリするぐらいのまるパクり具合でした。CSSなんて「cgpweb.css」って名前すら変えてなかったし。

データ分析から導くWebデザイン/エンジニアリング – CGPWEB [株式会社シータス&ゼネラルプレス]

今回のエントリーは、そんな盗作サイトを発見してから、中国の弁護士に依頼して当該サイトのサーバー管理会社と制作会社と思しき会社に警告状を送付してもらい、無事に盗作サイトを閉鎖させるまでの盗作対応まとめです。

それはそれは、見事なまでの盗作

サイトまるまる盗作されました。細かなところに粗さがあって、微妙にCGPWEBより劣化はしていたと思うけれど

ローンチ直後、CGPWEBは雑誌『Web Designing』や多くのギャラリーサイトに紹介してもらうことができ、PRとして一定の反響を得ることができました。やはり作り手として世の反応は気になるわけで、ローンチ直後はわりと熱心にSNSなどで誰かリアクションをしてくれていないかチェックしていました。
そんななか、6月下旬に偶然Google検索の結果画面を見ていて、中国語で書かれた文章のなかに「CGPWEB」という単語を発見。「何だろうな」と思ってクリックしてみると、それはそれは見事なまでの盗作サイトが表示されたのでした。

自慢じゃないけど、デザインを盗まれたと感じた経験はこれまでにも何回かありました。
でもそれは、さすがにページ全体まるまる盗作というわけではなく、あくまでも全体のなかでデザインが似ている箇所がいくつか見受けられる程度だったりして、「インスピレーション」や「偶然」の範疇と言われれば仕方のないレベルでのこと。

しかし、今回のCGPWEBの模倣は完全に「インスピレーション」や「偶然」の範疇を超えていた。
パッと見は日本語か中国語かの違いなだけでほとんど一緒のサイトにしか見えない。おまけにシータス&ゼネラルプレスのロゴや、メンバーのうちの1人のGIFアニメがそのまま転用されているなど、盗作の決定的な証拠もいくつか。

僕としても「これはさすがに!」と思い、すぐに弊社の戦略推進室・井上幹雄さんに相談することにしました。井上さんからの回答は、「まずは警告状を出すことになる。そのためには、CGPWEBが本家で向こうが模倣サイト。CGPWEBが中国のサイトよりも先にローンチしているという証拠を集めましょう」ということでした。
盗作サイトを発見し、井上さんにメールで相談。直後に井上さんから返信をもらったのが、6月23日の話です。

まずは盗作サイトの情報収集と証拠保全

魚拓サービスだったり、aguseのようなサイト調査ツールはこういうときに非常に役立ちます

盗作サイトはどうやら映像の専門学校みたいでした。連絡先はサイトに明記してあったので、運営者はおそらくその連絡先を辿ればわかるはず(結果、よくわからなかったようですが)。
なので、盗作サイト以外から得られる情報がないかを確認することに。

まずはWhoisでドメイン情報を調査しました。
盗作サイトのドメインレジストラ(ドメインの登録代行業者)は中国の会社であることが判明。そして、ドメインが登録されたのは2013年の6月5日であることがわかりました。
CGPWEBのローンチは4月17日なので、盗作サイトのドメインが登録されるよりも先にローンチしていることは、こちらが本物であることを主張する材料になるはず。

WHOIS – ウィキペディア – Wikipedia

続けて、aguseでその他の情報を収集。どうやら盗作サイトのWebサーバーは香港にあることが判明しました。

aguse.jp: ウェブ調査

あとはすかさず盗作サイトのキャプチャを保存。Webサイトはいつ消えるかわからないので、魚拓サービスで証拠を保存して、自分でもキャプチャを残しておきました。

ウェブ魚拓

ちなみに盗作サイトのフッターには制作会社と思しき会社のサイトがリンクされていたので、その制作会社のサイトのキャプチャも欠かさず保存。
案の定、制作会社のサイトには盗作サイトが制作実績として掲載されていました(実は今もキャプチャが掲載されている……)。

初動としてやったのは、これら盗作サイトの情報収集と盗作の証拠を保全することでした。
これらの情報をもとにCGPWEBが本物であることを証明し、盗作サイトを削除するよう要請する警告状を作ってもらえばよいわけですね。
ここから先は井上さんはじめ、会社の経営企画部のみなさんに大変お世話になりました。

まず中国の弁護士を手配して、盗作サイトの運営者やサーバ管理会社の素行調査を依頼、警告状の内容を詰めていただきました。
経理のほうでも中国への送金(弁護士への支払い)って面倒とか、いろいろ初めてのことがあって大変だったみたいですが、僕らの権利を守るために戦ってもらった会社には本当に感謝しています。

こっちが本物であることを証明するもの

CGPWEBはローンチから約2週間後の4月30日、Internet Archiveに登録されたようです。

さて。警告状の内容は盗作サイトの削除要請ですが、それを主張するためにはこっちが本物であることを盗作者(とサーバー会社など)に突き付けることが重要です。

Webの場合、サーバーにUPして世界じゅうの誰からもアクセスできるようになった瞬間が「公開」なわけですが、公開したからと言ってそれが即座に世に認知され、公開したその日が誰もが知るところの「公開日」として定められるわけでもない。
つまり、ローンチ日を客観的に証明するものって、実はなかったりする。

どっちが先にローンチしたかを客観的に証明するには、第三者の証言なり承認なりが必要になってきますが、Webの場合はそうしたものがなかなかない。
僕らが証拠としてあげられるのは、Googleなどの検索エンジンにいつインデックスされたか、Internet Archiveにいつアーカイブされたか、ブックマークサイトやギャラリーサイトにいつ掲載されたか、ぐらい。

Internet Archive: Digital Library of Free Books, Movies, Music & Wayback Machine

僕らのサイトがこれら第三者のページに掲載された日よりも先に相手方のサイトがアップされていたという証拠を、相手に「出せ」という他ないわけです。
CGPWEBの場合、ローンチ直後から第三者のページに掲載されることも多かったので助かったけど、ページを公開してすぐに第三者のページに掲載される保証なんてどこにもない。新規サイトの立ち上げ直後なんて、誰からもアクセスされないのがむしろ当たり前だったりもする。
だから、これって確実に使える証拠ってわけじゃない。

Webページの存在証明サービスのようなものはいくつかあるみたいだけど、まだどれも実験段階だったりするし、そもそも存在証明サービスを提供する事業者そのものに信頼性がなければそんな証明は役に立たない。
Web上に公開されたページを保存するだけなら魚拓サービスでじゅうぶんなので、今回のような盗作を巡るトラブルでも起きない限り、そもそも存在証明自体に需要がないかもしれません。
この分野をビジネスとして成長させるのは難しい現実を考えると、Webページの公開日を証明することが実はもっとも難題だったりする。意外なところで苦労しました。

決定的な証拠はCGPWEBのメンバーがそこにいたこと

奥﨑さんが中国人に! 他の人物はわざわざGIFアニメを作り直していたのに、なぜか1人だけCGPWEBから転用。決定的な盗作の証拠を残してくれて助かりました

この盗作サイトがやらかしたミスは、実はCGPWEBに掲載されていたメンバーのうちの1人の写真をそのまま転用していたことでした。

TEAM – データ分析から導くWebデザイン/エンジニアリング – CGPWEB [株式会社シータス&ゼネラルプレス]

なぜか、このメンバーのうち奥﨑さんだけが「Assistant Lecturer(講師アシスタント)」として、そのまま中国人になっていた……。
奥﨑さんが日本人であり、シータス&ゼネラルプレスの社員であり、その写真を我々が撮影したというのは紛れもない事実であって、盗作者もさすがにそこは言い逃れようがない(はず)。

中国の弁護士には、Internet Archiveに残った履歴などから、CGPWEBが盗作サイトよりも早く公開されている事実とともに、奥﨑さんがシータス&ゼネラルプレスの社員であるという証拠があるぞ、という内容で盗作サイト削除要請の警告状を作ってもらいました。

中国の弁護士も、著作権を巡って中国国内で争うことに対しては多少ナーバスなようです。中国国内で版権を主張することの難しさをよくも悪くも知っているんでしょうね。
しかし、上記2つの証拠はCGPWEBの正当性を主張できるものなので、警告状を作成し送付する仕事を引き受けるという判断をしてもらえたようです。

中国の弁護士に書いてもらった警告状(写し)。モザイクの多いエントリーですいません……

警告の内容は「ただちにサイトを閉鎖せよ。でないと、差し止め訴訟と損害賠償請求も辞さないぞ」というものでした。
我々としては、実際に裁判にまで持ち込むかどうかというのは警告状の送付による相手の出方を見てから判断することにしていました。
海外で裁判を起こすこと自体が現実的じゃなかったりするし、特に中国で知的財産権について争うというのはリスクが大きい。しかも、訴訟費用も相当大きな額になってしまうことが予想される。

いろんな面で裁判にしてよいことはなさそうだというのは最初からわかっていましたが、まずは先方に対してモラルを問い、こちらの権利を主張するというアクションが何より大事だというのが僕らの意志でした。
特に奥﨑さんは肖像権を侵害されて勝手に向こうのメンバーにまでされてしまっているので、最悪の場合、奥﨑さんの写真だけでも差し替わればいいかな、と。

最終的に僕らの警告状を、盗作サイトのサーバー管理会社が受け取ったのが8月1日の夕方、制作会社と思しき会社が受け取ったのが8月2日の昼でした。

ちなみに盗作サイトの運営主体と思しき映像の専門学校は存在さえ怪しく、警告状を送付する術がなかったとのこと。弁護士に電話で素行調査をしてもらったものの、たらい回しにされて最終的に確たる責任者を割り出すことはできなかったらしい。
本当にこの学校が存在しているのかどうかは今なお謎のままです。

警告状が相手に届いた瞬間のサイト閉鎖

警告状が相手に届いてすぐに盗作サイトは閉鎖された模様。メンテナンス中の表示とともに、電話番号が記されただけの簡素なページに姿を変えました

警告状の効果はテキメンでした。
おそらく相手(サーバー管理会社と制作会社)の手元に警告状が届いてすぐに盗作サイトは閉鎖されました。
こちらで盗作サイトの閉鎖を確認したのは8月2日の夕方。警告状がサーバー管理会社に届いて1日足らず、制作会社に届いてからわずか半日のことです。

閉鎖後、盗作サイトには「現在メンテナンス中」という文言と問い合わせ先の電話番号だけが記載された状態が続いています。
このままWebサイト自体が閉鎖されるのか、それとも別のものに作り替えるつもりなのかはわかりませんが、一応CGPWEBを模倣したWebサイトは無事閉鎖させることができました。
しかし、当該サイトは閉鎖されたものの、制作会社と思しき会社の実績には依然としてこの盗作サイトのキャプチャが掲載されています。「PHPとMYSQLを使って25日の工期で作られたぞ」と。

盗作サイトは閉鎖されたものの、制作会社と思しき会社のサイトの実績には依然としてこの盗作サイトのキャプチャが貼られたままなのです

シータス&ゼネラルプレスとしては、盗作サイト自体が閉鎖されたことを確認できたので、一旦対応を終了するということになりました。
そもそもCGPWEBのメインビジュアルはパブリックドメインの絵画「民衆を導く自由の女神」なので、トップページのキャプチャの版権を主張するのが難しいこともあります。まあ、ページ右半分のデザインはまるパクリなのですけれども。
もしも、中国の制作会社が、我々がキャプチャ掲載についての追求までは行わないだろう、という判断のもとに、今なおこのキャプチャを掲載し続けているのだとしたら、なかなかに強かだなと思います。

インターネットの海は世界と繋がっています。
公開されたページはいつどこで誰の目に留まるのかわかりません。そして、自分の知らない間に悪用されたりするとも限らない。そういう意味では、作り手として自らの作品に対しての権利やそれを犯されたときの対応っていうのは、何となくでも知っておいたほうがよいのでしょうね。

今回の一件は自分としても、Webデザインの版権を主張することの難しさを垣間見ることができた、とても貴重な経験だったと思っています。
こういう思わぬトラブルも、言ってみれば自身の成長のチャンス。そういうチャンスを得るためにも、我々にできることはやっぱり日々いいモノを作り続けることなんだと改めて思ったのでした。
Create, Artist, Do Not Talk!

Comment / Trackback (7)

  1. @sato4yoshida

    おおお、これはかなりいい事例。
    今後もしなにか起こった時のために。
    http://t.co/4MQIUEFhlu

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  2. @misekakecom

    大胆すぎるww → 完全にパクられた!? 中国の盗作サイトを閉鎖せよ - 仕事の話アレコレ - Writing Mode http://t.co/J0wqQb07h1

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  3. @beesukei

    まさかwebサイトまでパクるとはヽ(`д´)ノ →完全にパクられた!? 中国の盗作サイトを閉鎖せよ - 仕事の話アレコレ - Writing Mode - http://t.co/2ueJ8N6N0J

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  4. @attadipa

    興味深い (´ω`) /完全にパクられた!? 中国の盗作サイトを閉鎖せよ - 仕事の話アレコレ - Writing Mode http://t.co/HauveGBGLB

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  5. @fujii_takashi_

    完全にパクられた!? 中国の盗作サイトを閉鎖せよ http://t.co/H41So0rwd8 |これすごく面白かった。実際に自分にこの事象が起こったらどうするんだろう。

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  6. @garterblue

    完全にパクられた!? 中国の盗作サイトを閉鎖せよ - 仕事の話アレコレ - Writing Mode http://t.co/Q78LNtlmKc

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  7. @Kurobuchi

    中国にWebサイトを丸パクリされた方の対応のまとめ。 / “完全にパクられた!? 中国の盗作サイトを閉鎖せよ - 仕事の話アレコレ - Writing Mode” https://t.co/ChoTxGy6zY

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