仕事の話アレコレ

天誅組終焉の地、奈良の東吉野村で「ふるさとテレワーク」

だいぶご無沙汰のブログ更新です。
なんと、これが2016年のファーストエントリーで昨年10月以来およそ4カ月ぶりの更新。
今年もよろしくお願いします。

Web業界では、「テレワーク」よりも「リモートワーク」という言葉のほうが浸透しているかもしれませんね。
ICTを活用して時間や場所に制約を受けず柔軟に働ける勤労形態「テレワーク」が、日本でも徐々に広まりつつあります。

非IT企業の授賞が増加–テレワーク推進の会長賞に佐賀県とリクルートMP – ZDNet Japan

そして、地方(ふるさと)で暮らしながら都市部の仕事を行うことを「ふるさとテレワーク」と呼ぶらしい。
特に人口減少が深刻化する地方を活性化するための一手として、昨年から総務省は「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」を全国各地で行っています。
都市部からの移住者や企業のサテライトオフィスを地方へ誘致することで、地方創生を実現しようというわけです。

ふるさとテレワーク実証事業が本格始動!新しい働き方は「地方創生」につながるか |ビジネス+IT

僕が所属しているシータス&ゼネラルプレスもこの実証事業に参加しており、僕は昨年12月初旬の1週間と2月中旬の1週間、計2週間ほど奈良県吉野郡東吉野村にあるシェアオフィス「OFFICE CAMP」で過ごしてきました。

Webの仕事はいつでもどこでもやれるとは言え、やっぱり企業の一員として働く場合にはオフィスワークが仕事の中心になります。
「社員どうし、お互いに顔を突き合わせてやるのが仕事でしょ?」というのを古い考えだと一蹴できるほど、僕らはスタンドアロンに何でも自己完結できるスーパーマンじゃない。
オフィスワークでしか生まれない、よいコミュニケーションだったり、組織としての一体感といった価値も確実に存在すると思っています。

オフィスキャンプ東吉野|OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO

NO MORE 通勤電車と東日本大震災

自然豊かで静かな東吉野村。空気はきれいで健康には確実によい環境と言えます

僕は今、東京都文京区に住んでいて、同じく文京区にあるオフィスまでは地下鉄で1駅、自転車で5分、歩いても20分ほどです。リモートワークに興味がありながら矛盾をしているわけですが、今の僕は会社のすぐ近くに住んでいます。

もともと東京のベッドタウンである千葉県柏市出身だけど、東京近郊を走るJR・地下鉄の通勤ラッシュから逃れるため、部屋がちょっと狭いのは我慢して都心で暮らすようになりました。
それは別に贅沢をしたかったわけでなく、そうせざるをえなかった経緯があったから。

3年半、ずっと「パニック」だった – 食と暮らしのエトセトラ – Writing Mode

そして多くの日本人と同じく、東日本大震災も自分の人生観を大きく変えた出来事でした。

「人生は長いから、とりあえず目の前のことをコツコツやっていこう」と思っていても、いつどこでどのようなかたちで自分の人生が終わるのかはわからない。

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だからと言って、目の前のことから逃げたりしたくないし、僕は基本的にはコツコツやっていくタイプだと自覚しています。
夢想家というよりは現実主義者だし、突拍子もないことをやろうと言い出す勇気もない。
だけど、自分がやりたいことはやれるうちにチャレンジしてみたいという意識が、3.11を機になんとなく芽生えたことは間違いない。

僕はWebが好きだし、デザインも好き。
僕らを信用してくださるクライアントがいるのは純粋に喜ばしいし、仕事仲間にだって恵まれていると思ってる。
デジタルメディアを通じて、世界にサービスや商品の魅力を伝えるこの仕事に対して誇りだって持っています。

一方で、あらゆるサービスや商品が洗練され、しかも低価格でスピーディに供給されるのが当たり前になってしまった東京で、僕たちが生み出せる価値はあと何が残っているだろう、と思ったりもするわけです。

場所が離れていること自体は問題ではない

Google Chromeboxで東京と奈良は常に結ばれていました。大画面のモニタ越しに目が合うこともしばしば

曲がりなりにもチームを率いることを経験させてもらって感じるのは、みんながひとつになることの難しさ。
ひとつになるというのは、単に仲良しチームになるということでなく、強いチームになるという意味で。

仕事仲間は大人になってから出会った人たちなので、それぞれに育ってきた時代も環境も違うし、受けてきた教育も違う。年齢や性別だってそれぞれバラバラ。要は価値観の異なる要素が多い。
みんな大人だし、長く一緒にやっていく心づもりはあるから、お互いのことを丁寧に探り合いながら、その人となりを分かり合おうとします。それでも相容れない価値観というのはどこかにあったりするものだけれど。

マネジメントの仕事のひとつは、価値観の異なる人たちを上手に融合させることだと思います。
人と人の間に入って、疑念や不安を払拭したり、文句や愚痴も含めて話を聞いたり、褒めたり叱ったり。

しかし、大人というのはなかなか本音を話してくれないものです。
まったく嘘偽りのない世界なんてありえないのはよく知ってるし、本音と建前だって、遠慮だって必要なんだけど、基本は裏表なく、忌憚なくお互いに意見を言い合えるのが信頼関係だと僕は思ってます。
そういう関係性を築くのは、当然、一長一短ではいかない。なかなか人に信じてもらえるようになるって難しい。
少なくとも、自分が信じていない人から信じてもらえるなんてありえないから、僕は基本的には相手を信じてコミュニケーションしようと心がけています。
だから、ちょっと言いづらいこともきちんと言う。特に仕事においては、「YES」と「NO」はできる限りハッキリさせたほうがいいと思ってる。
もちろん、必要以上のことは言わないし、言い方は大事だけれども。

2週間テレワークを実践してみて感じるのは、ある程度関係性のできあがった人との間であれば、場所が離れていても一緒に仕事はできるということ。
逆に言えば、そうでない関係性の場合、リアルオフィスで一緒に働いていても仕事は前に進まない。

要するに、場所が離れているかどうかは、チームワークにおいてさほど重要な要素ではないということです。

自分にとって本当に大切なものは何か

2週間お世話になった民宿の飼い猫。かなり人懐っこい猫で人恋しさを癒してくれました

業務そのもののスキルはすごく重要。
身ひとつで生きていけるスキルは何かしら持っていたいと思う。

僕はWebを仕事にして今年でちょうど10年。今ほど分業化が進む前からWebに携わり、これまでにいろんなジャンルのサイト構築をやってこれたことは自信になってます。
新しい技術がどんどん出てくる世界なので、修行はいつまでも必要だと思うけど。

業務スキルが向上すれば、結果もそれにともなって付いてくるはず。基本は。
ただし、結果がどうあれ、積み重ねの先に自分が見てみたい世界がどんなものなのかは漠然とでいいから考えておきたい。何の理念もビジョンもなく、ただ目の前のノルマを達成しようとするのが仕事だとは思わない。

そんな当たり前のことはわかっているはずなのに、忙しくなってくると本当に自分が大切にしたいものが何なのか、たまにわからなくなる時があります。
我慢も緊張も必要だけど、些細なことにイライラし、常にピリピリしながら働いていて生み出せるものなんて何もない。
僕自身、野心がないわけじゃないし、競争も別に嫌いじゃないけど、目的のためなら手段を選ばないようなやり方をしていいわけじゃない。
「人として」の部分は決して忘れないようにしなければいかんと思うわけです。

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東京は人と物で溢れていて、いろんな誘惑も絶えないし、刺激的で飽きないけれど、自分にとって大切で身近になくてはならないものは実は数少ないのだということに改めて気付かされた2週間。

僕はまだしばらく東京で頑張るつもりだけど、少子高齢化や人口減少が進むと同時に世の中が便利になるにつれ、ワークスタイルのシフトが訪れると思ってます。だから、今から新しい働き方のことを考えておいて決して損はないはず。
今回の実証事業は、リモートワークについて改めて真剣に考え、実際にオフィスから離れて働くことを体験できたよい機会でした。

願わくば、今年も東吉野村に行けますように。

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