フロントエンドとバックエンドの境界線
「デザイナーでもコードが書けなきゃダメなの?」みたいなブログ記事を最近ときどき見かける気がします。結論から言うと、僕なら絵作りに特化した人にはコードが書けるデザイナーよりも一歩上のビジュアルデザインを期待しちゃうかな、ってだけの話。
ただひとつ言えるのは、Webデザイナーとして絵作りに特化するためには技術を補完してくれるパートナーの存在が不可欠だということ。コードは書けなくとも、エンジニアと対話ができないとWebデザイナーは勤まりませんよ、というお話です。
最近、たまに思うんです。「何でオレ、JavaScript書いてんだろ」って。いや、別にコード書くのも決して嫌いじゃないんですけどね。
小規模な組織に所属したり、フリーランスで働くWebデザイナーがカバーしなければならない領域は、分業が進んだ組織よりも多いのが当たり前。そういう意味では、僕のように中途半端にいろんなことに手を出してきたヤツは今の組織に向いているのかもしれないです。
ディレクションしながらデザイン作るし、HTML書くし、JavaScript書くし、PHP書くし。
そういうマルチロールなスタンスで働くことを会社にも許容してもらってるわけで、その点は逆に感謝と言えば感謝なのかな。
「何でもできる」と「何もできない」は紙一重
器用貧乏という言葉がまさにそれで、僕のようなタイプが一番陥りがちな状態が、何でもできるようで実は何ひとつできない人間になってしまうこと。
自分なりの軸はぶらさないようにしないといけないとは常に思っていて、僕はあくまでビジュアルデザインのプロフェッショナル。
ただし、よいビジュアルに加えて、よいユーザーエクスペリエンスを生み出すことこそ現代のWebデザイナーに求められる能力なので、できる限りフロントエンドの技術への理解を深める努力は怠らないでいようと考えています。
そもそもビジュアルデザインって究極的には好みだったりするわけです。
プロのデザイナーとしてある程度キャリアを積んでくると、最低限クライアントを納得させられるだけの絵は作れるようになります。そうすると、絵作り以外のことを身につけようと思う余裕だったり焦りだったりが出てくる。
キャリアパスとも関わる話だけど、ある人はそこでディレクターにステップアップしてフロントに立ちながら制作を指揮するポジションを選び、またある人は技術力アップに注力して独力でより複雑なWebサイトを構築できる職人としての道を選ぶ。Webデザイナーのネクストステージは、大きくはこの2つに分かれるんじゃないでしょうか。
ひとりで何でもやれるに越したことはないけど、そんなスーパーマンはいないでしょう。どこかで自分の仕事の範囲に線を引かないと、不得手なことにリソースを奪われて本業に皺寄せがいくという悪循環が生じます。
人それぞれに得意分野があれば苦手分野もあるわけで、相互に足りないところを補完し合えればそれでよいのです。それが組織というものが持つスケールメリット。
フロントエンドエンジニアというポジション
デスクトップファーストでWebを構築していく今のスタイルは、今後数年で大きく変わるでしょう。
数年後にはモバイル端末によるインターネット利用がデスクトップ端末を大きく上回ると予想されています。
ウェブを根底から変える『モバイルファースト』とは何か 27歳! ロシア出身の気鋭社長が説く「PC時代の終わり」:PRESIDENT Online – プレジデント
今後は否応なくモバイルファーストでWebを構築していく必要性に迫られるケースが増えそうです。
そうなったとき、より重要になってくるのはビジュアルデザインの質の高さより、操作性やパフォーマンス(高速化)を重視したユーザーエクスペリエンスデザインの完成度。デザイナーとしてエネルギーを注ぐべきはPhotoshopでの絵作りではなくなってくるわけで、HTML5/CSS3/JavaScriptを駆使できるフロントエンドエンジニアへの期待はこれまで以上に大きくなるはずです。
とは言え、ある程度Web制作に特化した体力のある組織でないと、なかなかフロントエンドエンジニアの専任を人材として確保するのは難しい側面もあります。フロントエンドエンジニアリングの領域をカバーできるようなデザイナーとバックエンドエンジニアの協働で何とかうまく回ってしまうケースは実に多い。
仮にそうしたデザイナーとバックエンドエンジニアの間にフロントエンドエンジニアを充てがう場合、その人に求められる役割は相当な専門知識を活かした提案力と実行力になります。
現状、高度なフロントエンドエンジニアリングに対して、エネルギー(人材、時間、予算)を割ける受託案件はかなり限られているというのが僕の認識です。少なくとも僕の今の職場はそう。
だから僕はデザインを作ったうえでなるべく自分でコードを書いて、サーバーサイドの開発が必要なければ基本はひとりでWebサイトを構築できるだけのスキル修得をめざしてきました。
いわゆる「Web制作会社」でキャリアを積んでおらず、制作体制には恵まれてこなかったので、そういう人材にならざるをえなかったわけです。
もちろん僕ひとりでバックエンドの開発までは手に負えないので、そこは然るべきパートナーに頼っています。サーバーまわりやシステム構築っていうところにまで手を伸ばせるほど、僕のキャパシティは広くない。
正直に言ってしまうと、僕はJavaScriptを書くのも決して得意ではありません。
デザイナーとして見た場合には書ける部類に入るような気もしていますが、効率的でセキュリティに配慮したプログラミングができるかというと怪しい。妥協はしたくない性格だからこそ、プロフェッショナルなエンジニアに頼りたいときはやっぱりあります。
境界線の溝を埋めるために
だから僕の場合は、ちょっと複雑なJavaScriptを書かなければいけないところからがパートナーとの協業を模索する境界線。
デザイン、HTML、CSSまでは完全に僕の仕事。そして最低限、動きのモックアップまでは僕が作るから、コードとして完成度の高いJavaScriptを書くところからはお任せします。もちろんバックエンドの開発もね。それが今の僕のスタンス。
パートナー探しのポイントは、自分のできないところを補完してもらいつつ、お互いの境界線を完全に分断しないことなんじゃないかと思います。お互いの仕事に対して突っ込み合って、コミュニケーションしながらひとつのものを作り上げていくのが理想。
両者の溝を埋めるのは、結局自分がどこまでパートナーのスキルを客観的に評価できる目を持てるかどうか。つまり、ある程度パートナーの仕事の領域にまで足を踏み入れられるだけの知識や経験がなければダメだと思うわけです。
そういう意味では、僕はエンジニアにだってデザインセンスを求めます。自分でデザインを作れ、とは言わないけれど。
自分が職人気質だからこういう考えに至るのかもしれないけれど、やっぱり何もわかってないし、できないヤツは舐められちゃうと思うのです。
「口だけ」の人って一番質が悪い。よっぽど口が達者で頭の回転が速い人でない限りはね。
話が逸れましたが、収束させていくと、一口にWebデザイナーと言ってもいろんなキャラクターがいるわけです。ビジュアルを作り上げるのが得意な人、またはエンジニアリングが得意な人。人それぞれに色があってよくて、Webにもいろんなゴールがあるだろうから、デザイナーとしてあるべき姿がどんなものなのかは一概には言えません。
ひとつ言えるのは、デザインから開発まですべてパーフェクトにこなす人なんて、そうそういないということです。
だから大事なのは、自分ひとりの能力では手に負えないものをカバーしてくれるパートナーをきちんと見つけること。そのためには自分の売りをしっかり持って、パートナーに自分と組むメリットを示せること。
そして、制作にかけられる時間と予算は有限なので、極論すれば、できる限り少ない人数ですばやく動ける体制をめざすこと。
そうした場合、自分自身のコアなスキルを重視し維持しながら、どれだけコア以外の領域をカバーできるかはやっぱりキーポイントになると言わざるをえません。
自分のできることが少なければ少ないほど、当然パートナーに負担を強いることになるだろうし、複数のパートナーを必要とする可能性が高くなる。すると、受けられる仕事の質も自分の稼ぎも限定されてくる。
だから、たとえば絵作りに特化したい場合は、Web以外の絵も描けるデザイナーになる、がひとつの解だと思います。自分の強み(そして弱み)と向き合うことで、自分の立ち回り方がわかり、然るべきパートナー像が見えてくるんでしょうね、きっと。
整理してみるとそういうことだけど、自分の置かれた状況や時代によって、このへんの考え方は大きく変わってくる気もします。
結局、自分なりの答えを常に模索し続け、新しいことへのチャレンジから逃げないことが何より大事。日々、努力と精進です。
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