仕事の話アレコレ

エースと、キャプテンと、リーダーと。

30代も半ばにさしかかってくると、否が応にもキャプテンシーやリーダーシップといったことからは目を背けられなくなってくる。
自らが最前線で得点したい気持ちは常にありつつも、ただ単に攻撃的に前のめりになるだけでなく時に周囲を見渡してバランスを取り、むしろあえて味方を前線に走らせるような厳しめのパスだって出していかないと、なかなか組織としての成長はないんだぜ。

人的な利益を優先し、組織としての成長を志向しないのであれば、むしろ組織からドロップアウトしてしまったほうがメリットは大きいはず。
自分ひとりで頑張れば、頑張ったぶんだけ見返りを期待できるのがフリーランサーの強みだから。

かくいう僕も20代の頃は独立志向が強かった。
特にデザイナーという職種において、独立というのは自分のスキルが一定水準以上にあることを端的に示すステータスでもあって、目標として実にわかりやすい。

ただし、ビジネスとして一定以上の金額を生み出そうとすると、小規模な組織にはわりとすぐに限界が訪れるわけで、結局独立したとしても組織を成熟させるためにエネルギーを注ぐことからは目を背けられないはず。

頭ではわかっていたけれど、最近はそういうことをより一層深く意識するようになった気がしてます。

リーダーをめざすということ

初めてギグスのドリブルを見たとき、鳥肌が立ったのを覚えてる。右のフィーゴ、左のギグスは僕の永遠のアイドル

エースとして実技を磨いてから、キャプテン(マネージャー)としてチームを任され、現役引退後は監督(リーダー)として勝利をめざす。

物事には順番があって、不器用な僕はそういうステップをひとつひとつ着実に踏まないとダメなんだと思ってます。だけど、漠然とでもそういうステップが頭のなかで描けてるかどうかはすごく重要なはず。

我々はなぜリーダーを目指さないといけないのか | sogitani.baigie.blog

若い頃はとにかく1対1で勝負を仕掛けてシュートを打つエゴイスティックなプレースタイルでも、晩年は中盤の底でボールを繋いでチームを引っ張るプレーにシフトする。
デザインが大好きな自分としては、多少プレースタイルを変えながら、少しでも長くデザイナーとしての選手生命を生きたい。一方でチームの精神的支柱となってメンバーを導くことに対しても、デザインと同じぐらいの情熱を注がなきゃいけないと思うのです。
だから今の僕は、プレイヤーとしてはマンチェスター・ユナイテッドのライアン・ギグス(選手兼コーチ)のようないぶし銀に憧れるなぁ。左サイドをキレキレのドリブルで駆け上がってた頃のギグスをよく知っているから余計にね。

Ryan Giggs – Player at All Time | Hold Up the Light , Ryan.

こういうことを言い出しちゃうのは、自分もそれなりに歳を取ってベテラン選手の仲間入りを果たしたということなのか、それとも、今までは自分がエースプレイヤーであろうとし過ぎて周りがきちんと見えていなかったということなのか。

まあ、たぶん、どちらもなんだろうなと思います。

とはいえ、まずはエースをめざすべし

努力のカタチは人それぞれ。個人的に一番大事なのは「継続は力なり」だと思ってる。諦めずに走り続けること

もちろん、自分がエースか否かは自身で決めることではなく周囲が決めるもの。

ただし、自覚がなければエースなんて務まらないんじゃないかと個人的には思っていて、エースとは努力して、志して、強く意識してなるものなんじゃないでしょうか。「オレにボールを寄こせ」と声に出して言えないキャラクターは、たぶんエースに向いてない。
決して天狗になっちゃダメだけど、自信を持つことは絶対的に重要。自分に自信がないと、ほんのちょっとしたことで考えが揺らいでしまうはずで、短い間に言ってることがコロコロと変わったり、重要な物事の判断を他人に委ねてしまったり、なんてことになりがちなんじゃないかな。

僕も、自分のテリトリー(デザインまわり)については、基本はストイックに自信を持ってやり切れるエゴイストでありたいと思う。
ときに傲慢で自意識過剰、自己中心的な一面が僕のなかに潜んでいて自分でもびっくりすることがあるけれど、作業者として自力でやり切れることに関しては、多少強引に押し切ってしまっていいと思ってる。
そういう意味では「自分のチカラだけでやり切れること」の範囲だったり、クオリティだったり、スピードだったりをどれだけ突き詰められるかが、エースプレイヤーになれるかどうかのキーファクターなんじゃないかと思う。

「どうせ作るのならば、自分の手でできるだけいいものを作りたい」。
シンプルに言えばそういうことになるんだろうけど、「いいもの」っていうのもいろんな答えがあるだけに、なかなかどうして突き詰めることは難しい。

頑張って努力したからエースになれるか(いいもの作れるか)、と言えば、そんな保証はどこにもないけれど、努力なくしてエースの看板を背負える人なんていないんじゃなかろうか。
なので、自分もまだまだクオリティにしろ、スピードにしろ、プレイヤーとして己を磨く努力は続けたい。エースプレイヤーをめざす、という気持ちは常に持っていたいな、と思います。

エースからのステップアップ

小学校の頃、いやいや学級委員をやらされることが多かったのを思い出す。今思えば、学級委員ってキャプテンの感覚に近いな、と

エースとキャプテンで求められる資質はそれぞれに違う部分があるけど、エースの次のステップが何かと言われたら、それはやっぱりキャプテンなんだろう、と個人的には思います。

キャプテンは必ずしもエースプレイヤーでなくとも務まる気がしますが、それでもやはり自らに高い能力が必要であることに変わりありません。だって、そもそもレギュラーとして試合に出られなきゃ、キャプテンマークを巻く資格がないんだもの。

メンバーにモチベーションを与え、チームを勝利に導くための支柱になる。そのためには、自身の力を最大限に発揮しつつ、チーム全体の底上げを常に意識していかなきゃならないわけです。どんなにギグスが優れたプレイヤーでも、悲しいことにウェールズ代表でW杯には出られないわけで、チーム全体のレベルを押し上げていかないとライバルとの闘いに勝つことはできない。

ライバルに勝てないというのは、ビジネスの世界では利益を生み出せないということ。
まったく観客の入らない弱小チームなんてその必要性がなくなってしまうわけで、組織におけるキャプテンはそういうことまできちんと考えて、メンバーに対する責任を背負うべき。

なので、自分も部下に対してはワガママや甘えは基本的に許したくない。極論するとワガママや甘えの水準が高ければ高いほどチームとしては成熟しているわけだから、スパルタは自分の趣味じゃないけど、時には厳しいことだってはっきり言わなきゃいけないと思ってます。嫌われ役を買うことも上司の仕事。
だからこそなんだけど、仲間として「一緒に働ける喜び」をそれぞれに少しでも感じられるようにしていたいし、やっぱりお互いのことをリスペクトできる関係でありたい。
チームのために頑張れる、ってそういうことでしょ。最終的には。

一方で、キャプテンシーを発揮することは大切だけど、利益を生み出す仕事の本質ではなかったりする。キャプテンシーは基本的に内部のメンバーに還元されるもので、クライアントにとっては極論どうでもいい話なんです。
だからこそ、まだまだ若い僕は現役でプレイを続けることにこだわりたい。ギグスのように、もうしばらくはデザインを楽しみたいし、デザインのチカラでみんなに貢献できるはずだと思ってる。

キャプテンとリーダーの違い

ギグスはもちろん、ベッカム、クリスティアーノ・ロナウド、ルーニーなど、数多くの名選手を見いだし、27年間もマン・Uを率いてきたのが、サー・アレックス・ファーガソン監督(2013年5月に退任)

組織におけるキャプテンはいわゆるマネージャーだと僕は思ってます。完全に持論ですけど。

何が言いたいかというと、キャプテンはあくまでも監督の戦術に基づいて現場をまとめる「管理者」であり、組織におけるマネージャーも同じ。
どちらかというと、マネージャーはリスクマネジメントに目を光らせて危険な空きスペースを常にカバーする役回りになりがちかな、という気がしています。
僕自身は攻めにいきたいけど、チームの守備が脆い以上は守備に専念しなきゃというケースは結構ある。攻めと守りのバランスは大事だけれど、失点を恐れて守ってばかりじゃ得点は取れないんだぜ、といつも思う。
これは、意外にも神経質な僕の性格によるところが大きいのかもしれない。

だけど確実に言えるのは、監督に言われたことをその通りやってる人間に、キャプテンより上のステップは存在しないということ。
リーダーは独自の戦術論を持っているべきだし、他の人には真似ができないような新しいチャレンジをしていかなきゃいけない。
事業や組織が停滞を起こさないためには、常に物事を革新していく感覚が必要だし、ときにルールを上手に破るぐらいの覚悟だって必要。
たとえ優勝チームでも、翌年には戦術なんて相手チームから徹底的に研究されてるわけだし、そういう意味では強豪チームにこそ常に革新が必要になってくるんじゃないかな。つまり、他の人と同じことをやっていたら、単純に「勝つ」って難しいわけですよ。

新しいことにチャレンジしていくには、自身にその覚悟や能力ももちろん必要だし、何よりもチームのメンバーのチカラが必要。
大前提として監督は選手じゃないからピッチを走れないのです。プレイするのはあくまでも選手。
敷かれたレールの上を正確に走ることにだってとても高い能力が必要だと思うけど、リーダーはレールが途切れないよう常に先回りして正しい方向にレールを敷いていかなきゃいけない。自分なりの正しい戦術を決めて選手にしっかり伝えていかないと、どんなに優秀な選手が揃っていてもきっと勝てるチームは作れない。

だから、リーダーは人と上手にコミュニケーションして、その人の能力を正確に見抜き、ときに自分よりはるかに優秀なプレイヤーを上手に頼ることだって必要になってくる。
無限ループするけど、相手を上手に頼れるのは、結局、自分が相手にも頼られているから。世の中は人間どうしのギブ&テイクで成り立ってるわけで、やっぱり自分が相手にどれだけのものを与えられるか、ってすごく重要なんだよ。

そして話が元に戻るけど、だからこそ、まずはエースをめざすべきなんだと僕は思う。
ある分野でそれ相応のプロフェッショナルであってこそ、自分が相手に与えられるものが見えてくる。
エースはじきにキャプテンに、そしてキャプテンのなかからリーダーが生まれていく。
その階段にショートカットはありえないな。デザイナーとしてキャリアをスタートするとね。
他の職業もきっと一緒なんじゃないかなぁ……。

以上。リーダーをめざすっていうのは、今の僕にはそういうふうに見えてます。
ちなみに今の僕は、よく言ってもキャプテン止まりだな。

Comment / Trackback (3)

  1. @garterblue

    エースと、キャプテンと、リーダーと。 - 仕事の話アレコレ - Writing Mode http://t.co/Yr2hDhiug8

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  2. @minokomadai

    RT @r1nnnnnn: エースってこれからの若手に対して使われることが多くて、それも他人である上司とかが評価する言葉というイメージがある。 http://t.co/DIGX0Rnc1U本田はあらゆる意味で一番スゴいと思うけどザックジャパンのエースってわけじゃないよな気もする…

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  3. やる気スイッチの燃料 | 亀井泉のブログ

    [...] 特にこちらの記事は、長文ではありますが、具体的で分かりやすかったので御紹介します。 [...]

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