Webデザイナーとして必要な、マクロ視点とミクロ視点
グラフィックデザインやWebデザインを突き詰めようとすると、どうしても細かな話に終止しがちなんだけれども、デザインに関するミクロな議論はプロジェクトが本来果たすべき重要な目的とはズレていることも多い。
デザイナーも発注者も、一生懸命な故に細かな「枝葉」が気になってしまったりするんだけれども、もっとも大切で忘れてはならない視点は「ユーザー(利用者)にとって見やすく操作しやすいデザインとは何か」ということです。
ディテールの詰めはデザインの完成度を高めるためにとてつもなく重要な要素だけれど、そこは職人としてのデザイナーが担保すべき職域。
もちろん、そのためには多くの人から信頼してもらえる優秀なデザイナーとして、我々自身に自立した能力が備わっている必要があることは忘れちゃいけない。
プロのデザイナーがこだわるべき細部の仕上げ – やっぱりWebが好き – Writing Mode
デザイナーとしての割り切りと覚悟
WebサイトやWebサービスをデザインする際にデザイナーとしてもっともしんどいのは、微妙なレイアウト調整や色調整、写真のトリミング調整、アイコンやテクスチャの作成&修正みたいなことに延々とリソースを割かなければならないプロジェクトの存在です。
受託制作でクライアントありきのものは、ある程度こうしたミクロな議論に引きずられてしまうのは仕方ないという割り切りだって必要です。
デザインは究極的に単なる「好み」だったりするので、たとえ僕の「好み」じゃなかったとしても、クライアントが望むのならばその意向を優先するのは当然の話。
そうしないと仕事は終わらない、というか、仕事として成立しない。
別に僕は、自分のデザインを押し売りするつもりなど毛頭ないわけで、可能な限りクライアントの意向に沿うようにデザインを提供する立場だということはじゅうぶんに弁えているつもり。
ただし、プロとしてデザインを作っている以上、Webサイトを見るユーザーにとって「悪しき」デザインにはしないという責任感は常に持っていたいと思います。
毎日、毎日、Webサイトを作っている我々だからこそ持っている知見は絶対にあるはずなので、下手な遠慮をするつもりはない。
クライアントに対して変に遠慮してしまっておかしなWebサイトを作り上げてしまう(時に作り上げることすらできないこともある)のは、我々にとってもクライアントにとっても不幸でしかない。
そして純粋に、費用対効果、技術的な制約、スケジュールなどを踏まえて、無条件に受け入れられないリクエストについては、きちんと交渉しながら着実にプロジェクトを前進させていく。
多少は強引さが必要なシーンすらあるし、おこがましいけど、ときにクライアントの「教育」も我々の仕事だという覚悟だって必要(もちろん、僕のほうがクライアントに教えてもらうことだって多々ある)。
一歩引いて俯瞰した視点でプロジェクト全体を見渡しながら、デザインが果たすべき役割を考えていく。ミクロな話から決して逃げず、一方でマクロな視点も忘れずにうまくバランスをとっていく。
それこそがデザイナーの使命だと僕は思ってます。
時代の流れに「レスポンシブ」であること
Windows XPのサポートが終了したとはいえ、デスクトップPCではいまだにHTML5を理解できないIE8対応を余儀なくされる。
一方でスマホやタブレットの進化は止まらないわけで、iWatchやGoogle Glassのようなウェアラブルデバイスが普及すれば、Webデザインはますますミニマルな方向にシフトしていくでしょう。
そんなふうにマルチデバイス対応が当たり前になってきた今、すべての端末で同質の情報を提供し、寸分の狂いもなくレイアウトを表示するなんてことはもはや不可能に近い。
たとえ今現在、世に出ているすべての端末で表示・動作検証したとしても、わずか数日のうちにWebブラウザやデバイスがアップデートされてしまう可能性は否定できないわけで、短期間で繰り返されるアップデートのインターバルにエネルギーを注ぐのは、無駄な努力に終わるリスクだってとても大きいのです。
だからWebデザイナーの立場でデザインを俯瞰的に捉えると、重要視すべきはレイアウトや装飾(ビジュアルデザイン)よりもインフォメーションアーキテクトやインターフェースデザインといった、より概念的なデザインになっていく。
ディテールを突き詰めるよりは、スピードを重要視し、100%でなくともまずはリリースして、結果を見ながら改修を繰り返す。
仕様をがっちり決めて、デザインして、開発して、テストして、やっとリリース、みたいなウォーターフォール・モデル型の開発に時間をかけていると、開発中に時代が変わっていっちゃう。
何でもかんでも新しいものに手を出すのは違うだろうし、デザインでもビジネスでも、スピードよりも重要な原則だってあると思うけど、躊躇している暇があったら「やっちゃう?」ぐらいのチャレンジャー精神は、ますます重要になってきてる気がします。
それでも「職人」としての情熱は絶やさない
これまで書いてきたことは、純粋に「デザイナー」として見ると少し「冷めた」意見かもしれません。
以前書いたエントリーにもそうした意見は多かった。
商業デザイナーとして遅かれ早かれ突き当たるであろういくつかの壁 – 仕事の話アレコレ – Writing Mode
確かにある種の割り切りは必要で、僕自身、ビジネスやマーケティングのセンスを持ち合わせたデザイナーでいたいという想いがとても強いのも事実。
っていうか、デザイナーってそういう職業。
「そのデザインは何のため? 誰のため?」をきちんと考えていくと、結局はマクロ視点でデザインを捉える必要が出てくるんだから。
だけど一方で、今はまだ職人としてディテールに対する神経質なまでのこだわりを持ち合わせていたい自分もいます。
職人気質な仕事ぶりこそ今の僕を支える土台だと思ってて、現役でデザインを作る体力があるうちは「アホか、って思われるぐらいディテールにこだわってやるんだぜ」という情熱は絶やしたくないなぁ。
時代も変わるし、同時に自分だって変わっていく(たぶん)。
自ら手を動かしてデザインを作らなくなることを選択する時がそのうち来るだろうし、もしかして一生来ないのかもしれない。
何年も先のことはよくわからないけど、ちょっとだけマクロな視点を持って、少しだけ先を見据えられるよう日々考えながら、今の自分にできることを着実にこなしていく。
そして、うまい具合に時代や仲間たちに流されていってやろうとも思いますよ。
そこは多少気楽に構えつつ、決して焦らず休まず。
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